駒井亨衣のメールマガジン
Vol.142 2019年2月号
「 不登校の中学3年生が企画したイベントが大成功 」
2019年1月27日、学び舎傍楽では不登校経験者のシンガー風見穏香さんとコラボして30回記念の不登校のおはなし会を行いました。この企画は、いつも傍楽に来てくれている不登校の中学3年生のT君が、「やりたい!」と言ったのがきっかけで実現しました。
T君は、不登校と言っても別室登校をしています。特性として聴覚過敏があり、クラスに入るとみんなの声が耳栓をしたくなるほど強烈に聞こえてきてしまうので、一緒にいるのがしんどくなってしまうそうです。
*聴覚過敏・・・特定の音に過剰反応したり、多くの人にとって気にならないような音が耐えられないほど大きく感じられたり…その結果イライラしてしまうことや、ぐったりと疲れて寝込んでしまうこともあります。(Wikipedia参照)
それで時々学校に行って、別の部屋で勉強をしています。不登校にもいろんなパターンがありますが、T君のような特性を持っている子は世の中に結構いるようです。その特性を持っている子は、生まれたときからその状態が普通で、それなりに対応していくので、親はなかなか気づくことができないそうです。
T君のお母さんも、T君に聴覚過敏があることは小学校の高学年の時にわかったそうです。担任の先生が大声で生徒を叱ったときに、恐ろしい思いをしてしまい、それがきっかけで学校に行きたくないとなったようです。きっと爆音のように聞こえたんでしょうね。日常にあふれる音が凶器のようになってしまっては、本当に辛いです。
お母さんは、T君の特性がわかった時に全てが腑に落ちたそうです。普通に音が気にならない人には決して分からない辛さがある。だから、無理やり何かをさせようとかするのは止め、自分で選択してできることを、少しずつやっていくようなカタチに変えたそうです。
お母さんは、T君が中学1年生の時から傍楽の不登校のおはなし会に参加してくれるようになりました。毎月のように来てくれるようになり、そのうちにT君も来るようになったのです。お母さんにとっての居場所がT君の居場所にもなって、2人で毎月来るようになりました。
T君は、最初は人見知りで、ただ傍で人の話を聞いているだけでした。でもだんだんと一緒にボードゲームをしたり、話したりするようになりました。傍楽に来る大人は、ごく普通に彼を受け止めて一緒に居てくれるので、T君は安心したのだと思います。
学校へ行っていない。そんなことは、なんの問題でもない。そんなスタンスです。
そして月一回の傍楽での時間が、彼の楽しみになって行きました。ちょうど1年前、シンガーの風見さんが不登校のおはなし会に遊びに来てくれて、歌を歌ってくれました。その歌がT君の心を揺さぶり、それから風見さんのファンになって、いつかまた風見さんが歌ってくれる場を作りたいと思うようになっていったようです。
去年の11月に、T君が風見さんを呼んでイベントを作りたいと言ったときは本当に驚きました。あんなに人見知りで緊張するT君がそんなことをやりたいと言った。これはカタチにしなくてはと、傍楽の運営を一手に引き受けてくれているナオミの広報の田中が頑張ってくれました。
そしてSNSでイベントの告知をしたところ、あっという間に満席になりました。遠くは横浜からも応募がありました。そんな状況の中、1月27日を迎えるまでにT君もお母さんも、当日のことを考えるとドキドキする毎日を送っていたようです。
そして当日。風見さんの素晴らしい曲「人でいたい」から始まりました。
勉強なんてできなくていいから、深い深い悲しみ分かる人でいたい
常識なんか知らなくていいから、辛い辛い痛みが分かる人でいたい
立派になんてなれなくていいから、淡い淡いやさしさを感じる人でいたい
器用な人になれなくていいから、痛い痛いくやしさが分かる人でいたい
空気なんてよめなくていいから、嫌なものは嫌って言える人でいたい
かっこ悪くてもかまわないから、目の前のことを必死に出来る人でいたい
バカにされたってかまわないから、どんな時もらしさを忘れない人でいたい
傷がついたってかまわないから、人を憎むより許し堪える人でいたい
失敗ばっかうまくいかなくても、諦めない気持ちを忘れない人でいたい
怖くて足が震えてもいいから、勇気を持って前に進める人でいたい
面倒くさくてかまわないから、熱い想いをしっかりもっている人でいたい
強い心持てなくてもいいから、人のために涙流せる人でいたい
この歌詞を聞いて私もほかのお母さんも涙が止まらなくなっていました。本当にそうだなあとしみじみ思うことばかりで。
その後は、風見さん、T君のお母さん、私がパネラーになって不登校の経験についての
話をし、そして参加者の人が4人ほどのグループに分かれてディスカッションをしました。
風見さんはほかに3曲歌ってくれました。心に染み入るような素敵な曲ばかりでした。
3時間のイベントは大成功に終わり、それぞれの人の心にあたたかいものを残したと思います。
T君は大きな大きな第一歩を踏み出し、たくさんの人に勇気を与えたと思います。今回のイベントを通して私は、特にT君の成長の凄さを感じました。
多くの人は、諦めているだけ。自分が決めたとき物事は動き始める。そしてみんなその可能性を持っている。想いが強い分だけ人の協力が働き、実現する。そのことをT君が教えてくれたなあと思います。T君にとっては、一生忘れることのない心に刻まれたイベントになったと思います。
追伸
風見さんのHPです。是非見てくださいね。
シンガーソングライター風見さんのWebサイトはこちらから